『しみ止めをつけます。しみる歯を教えてください。』
「ここから、ここまでの歯の裏側です。」
私は、上の前歯6本を指で差しました。
『わかりました。眼鏡を外して、台へ置いてください。』
「眼鏡がないとメモを見せてくださってもわかりませんので、持っています。」
歯科衛生士さんが、少し笑いました。
「椅子を倒します。」
「はい。」
椅子が倒れました。
ピンセットで挟んだ綿を見せられましたので、口を開けました。
「失礼します。」
唇と歯肉の間に脱脂綿を詰められて、しみ止めをつけていただきました。
『しばらく、そのままでお願いします。』
メモ内容に私がうなずくと、衛生士さんも笑顔で、うなずいてくれました。
その後、歯科衛生士さんが来られましたので、口を開けると、水が出る機械で、脱脂綿を濡らしてから、取り除いてくださいました。
『椅子を起こします。口をゆすいでください。』
「はい。」
私が口をゆすぐと、衛生士さんが、先生を呼びに行ってくださいました。
「……。」
先生が何かおしゃっていますが、マスクをしているため、聴覚障害者の私にはわかりません。
横で衛生士さんが、書いてくださいました。
『何か、気になったことや、伝えたいことはありますか?』
「いえ。特にありません。しみ止めも丁寧につけていただきました。」
『次回は、前歯の詰め物を取り替えます。』
「はい。よろしくお願いします。ありがとうございました。」
先生に頭を下げて、見送りました。
衛生士さんが、エプロンを外してくださいました。
「一々、書くのが大変でしたでしょう? 面倒なことをさせてしまいました。」
「いえ。」
「また、よろしくお願いします。」
「はい。お大事になさってください。」
「ありがとうございました。」
衛生士さんに頭を下げて、診察室から出ました。
待合室で待っていると、受付の方が、私に向かって頭を下げました。
領収書を見せられましたので、代金を払いました。
すると、メモを見せられました。
『3月1日、16:30』
「何曜日ですか? 水曜日ですね。お願いします。」
近くにあったカレンダーで、曜日の確認をしました。
診察券を受け取り、帰宅しました。