刑事さんがパソコンで、こう表示されました。
『これで取調は終わりです。何か質問はありますか?』
「ありません。」
『これは任意なのですが、自宅へ伺ってもよろしいでしょうか?』
刑事さんの言葉に、今までの取り調べは強制であることがわかりました。
任意ですので、断ることもできましたが、何をされるのか見届けたいので受けることにしました。
「どうぞいらしてください。」
『では、お互いにお昼を食べてから、午後1時半でいかがでしょうか?』
腕時計を見ると、12時10分前でした。
9時から始まりましたので、3時間も取調室にいたことになります。
『2時からにしますか?』
「今からでも大丈夫です。お帰りは飛行機でしょうし、早く終わらせた方が、よいのではありませんか?」
『飛行機は、明日の予約を取りました。』
しかし、明日の天気予報では、雪になっていました。
「地上は何ともなくても、雪で飛ばないこともありますので、お早めに帰られた方がよいのではないでしょうか。脅かして申し訳ありません。」
刑事さんが、驚いた表情をされたので、謝罪しました。
『午後1時半に、ご自宅へ伺います。』
「はい。これで帰ってもよろしいのですか?」
『はい。』
若い刑事さんが、取調室のドアにかけておかれた透明の袋を持って来られました。
袋の口を私に向けて下さいましたので、預けて置いた携帯電話を受け取りました。
椅子に掛けて置いたバッグに、携帯電話をしまい、立ち上がって、ダウンコートを着ました。
若い刑事さんが、ドアを開けて下さいましたので、刑事さんに会釈をしてから、若い刑事さんについて取調室を出ました。
取調室が並んでいる廊下を進むと、突き当りは事務室のようになっており、たくさんの方がおられました。
右に曲がって、若い刑事さんが重そうなスチール製のドアを開けると、入って来た時と同じように、もう一つ同じドアがありました。
そのドアも開けようとされましたが、鍵がかかっております。
戸惑っている若い刑事さんに、私が問いかけました。
「逃げないようにですか?」
若い刑事さんは下を向いて、ちょっと困った感じでしたが、下を向いたまま、廊下へ戻りました。
一人になって、開かないドアを見ると、鍵穴がありました。
入る時は鍵そのものがないドアに感じましたが、サムターンもなく、内側に鍵穴があります。
一人では出ることができないようになっていますので、犯罪者扱いなのだなと痛感しました。
続きます。
取り調べ 強制なのが 終わっても ドアが開かなきゃ 外に出られず