運転席の窓を閉められたHさんは、エンジンを切って、私にキーを渡してくれました。
「ガラスの破片は、車に乗るたびに見つけます。」
「ドアポケットにもありましたか?」
「いえ、ありませんでしたが、シートの間にはあります。ハンディ掃除機があれば、掃除できるのですが、持っていないため、見えても取れませんでした。」
「全ての破片を取り除くには、シートを外さなければなりませんよ。」
不可能なことは、言わないで欲しいという感じに思えました。
「指で触れられるところにありますので、小さな掃除機があれば取れると思います。」
「掃除機を貸してくれたら、掃除しますよ。」
「コードが届かないと思います。今日、ハンティ掃除機を持って来てと、伝えればよかったと思いました。」
「業務用の大きなのしかありませんよ。」
「そうなのですか。傷は、こことここにあります。顔を横にして見ると、あちこち傷がついているのもわかります。」
私は、ダシュボードの傷を指しました。
「免責5万円をお返しします!」
「どうして、お返しされるのでしょうか?」
Hさんが車から降りられて、言いました。
「(私)さんからいただいた免責5万円をお返しします!」
「苦情を言っているように聞こえたのだと思いますが、私は車の保険を使ったことがありませんので、運転に支障がない部分の修理は、保険では出来ないのかと思いました。傷ついたところを全部取り替えると、車両保険金額よりも多くなるのは理解しました。ただ、掃除がちょっとと思いましたので、保険会社へ、そのことをお伝えしました。そうしたら、来てくださることになって、驚いております。傷の確認をされるとのことでしたので、出来る範囲内で、何かしてくださるのかと思っていました。」
「車内の傷は、全て取り替えるとなると、車両保険25万円を超えてしまいますからね。」
「はい。そうだと思いました。傷は、毛羽立っていたのですが、雑巾で拭いただけでも、少し目立たなくなりました。コーティング剤を塗ったら、もっと目立たなくなると思いました。」
「免責5万円をお返しします!」
「そういうことではなくて、せっかく来てくださったので、掃除とか、ここで出来ることをしてくださるのかなと思っていました。ハンティ掃除機もないとのことですし、来てくださらなくても、よかったのではないでしょうか。」
「そんなことはありません。」
「車両保険以上に、修理代がかかることは理解しました。お車に乗っておられるようですが、お二人で来られたのですか?」
「そうです。」
「今日は、天候がよくてよかったですね。わざわざ遠いところをお越しいただきまして、ありがとうございました。」
「はい。失礼します。」
Hさんは、私に頭を下げて、助手席に乗って行かれました。
車内の掃除をするわけでもありませんでしたので、一体、何をしにきたのかと思いました。
氷割りのために、車を移動していましたので、元の位置に停めて、部屋の中へ入りました。
免責を お返しすると 言われたが どういうことか 説明されず
歯医者行き 無断で治療 よいのなら それを広めて 咎めは受けず