部屋から戻ると、私と話をしていた警察官はパトカーの近くにおられました。
車検証のコピーをお渡しすると、車の指紋を採取するかどうかを筆談で問われました。
『指紋を採取しますか?』
「指紋ですか?」
『黒い粉をかけるので、細かいところに入り込んで、洗っても取れにくいです。』
「え!」
『車屋さんで、洗ってもらえば取れます。』
「この季節に手袋をしていないことはないと思いますので、取れないのではないでしょうか? 私も除雪するのに、手袋をしています。」
『嫌ならばしません。』
「嫌ではありません」
「拒否しないのであれば、大抵は取ります。」
「では、お願いします。どのようにされるのか拝見します。」
『車の写真を撮りますので、撮影の立ち合いをお願いします。』
「はい。」
パトカー内から、カメラを持って行かれたので、もう済んでいるのだとばかり思っていました。
警察官は、私の車の運転席側に立って、左人差し指を割られたフロントガラスを指差しました。
「わかりました。」
こういう風にして、ということだと理解しました。
警察官と入れ替わって、同じようにしました。
カメラを見るのは嫌なので、顔は下向きです。
毛糸の帽子を被り、除雪用の上着を着て、長靴、分厚いゴム手袋、車検証を右手に持って、左手はフロントガラスを指しました。
洗っただけの顔ですから、絶対に写真撮影用に適しません。
顔が写るのが嫌だなと思いつつ、待っていましたが、よいと言ってくださらないので、何か変な気がして、カメラの方を見ました。
警察官が、私に手を上げて、ちょっと待ってというようなしぐさをしました。
どうしたのかと思ったら、パトカーからフイルムを出して、カメラに入れていました。
こういうのは、デジカメではないのですね。
一番、安いタイプの業務用フイルムでした。
今まで、とても落ち着いていると思った警察官ですが、この時は、ちょっと慌てているように見えました。
フロントガラスの撮影が終わったため、次はリアガラスの撮影です。
警察官が、運転席側の車の後ろの横に立ち、右手を割られたリアガラスを指しました。
「はい。わかりました。」
同じように警察官が立たれた位置に立ち、右手人差し指で指差し、撮影が終了しました。
警察の 現場撮影 立ち会った Vサインして ニッコリ笑顔
犯人は 誰だと思う 歯科医師を 疑う私 動機はあるし