「はい。」
奥さんが私に用紙を渡し、去って行かれました。
それは私が渡した手紙に、黒のボールペンで、びっしりと書き込まれていました。
院長先生が、書いてくださったようです。
何これ?
読んで、大変驚きました。
『少し削ったくらいで、食事が取れなくなるなんて、通常では考えられません。
削ったと言っても、ほんの少しです。
過剰反応すぎます。
常識が通じないようですね。
ザラザラした歯を磨いて、窪むほど削れることは絶対にありません。』
(マウスピースを作成するのならば、様子をみてもよかったのではないか)
『削る必要はありました。』
(寝ているときに、歯を食いしばってはいないと思う)
『わかりませんよ。食いしばっているかもしれません。』
(歯が削れるのが気になるので、歯磨き粉を使わないようにしている)
『歯磨きを使っていないのに、歯がしみるなんて、普段からよっぽど強く噛みしめているのですね。噛みしめすぎなのではありませんか。』
(マウスピースの型取りを3回も取り直したが、とてもしみた)
『すみませんね。きちんと合うものを作成しようと思い、何回も取り直しをしました。申し訳ありません。』
(削られた歯に舌で触れることもできないため、マウスピースは使えない)
『そんなの使ってみなければ、わかりませんよ。単に、思い込みが激しいのではありませんか。』
(下の歯の歯石は、取っても取らなくても、どちらでもよい)
『私も、どちらでもよいです。』
『こちらは誠意を持って、対応しています。患者さんを1時間以上も、お待たせして書きました。こんなもの後にして、いただきたいです。』
他にも書かれていましたが、よく覚えていません。
手元にあれば、全て公開しましたが、奥さんに回収されてしまいました。