はははのはのおはなし

私の歯を勝手に削ったのは、逮捕されて無罪になった歯科医ではありませんが、無罪になったニュース記事を引用したところ刑事告訴され、刑事さんから取り調べを受けました。その記事は地方法務局を通じて、1年以上前に見られないようにされておりますが、その歯科医は私に対して、非常に強い処罰意志と逮捕を望んでおられるとのことです。

勝手に歯を削られたのは、私に会いたかったから。

営業へ伺うと、20代の歯科衛生士さんが、私に気がつき、受付から声をかけてくださいました。

 

「こんにちは。」

「こんにちは。」

 

私は受付へ行き、衛生士さんにカタログを渡しました。

 

「ちょっと待っていてください。」

 

衛生士さんは、カタログを持って奥へ行かれました。

衛生士さんが、戻って来られて言いました。

 

「今日は、よかったです。」

「ありがとうございました。」

 

注文がないかどうかを聞いてくださったのでしょう。

注文があるときは、衛生士さんと入れ替わり、奥さんが来てくださいます。

 

ある日、いつものように営業へ伺うと、私に断って、衛生士さんが奥へ行かれました。

私は、何か注文があるかもしれないと思い、待っていました。

しばらくして、院長先生が来られました。

私は、びっくりしました。

院長先生は、私が持って行ったカタログを持って、パラパラとめくり始めました。

 

「こんにちは。」

「こんにちは。ーはーー。」

「患者さんがいらっしゃるのに、いいのですか!」

「たまには、いい。」

 

待合室には、誰もいませんでしたが、玄関に靴がありますので、患者さんが診察室におられます。

 

「いつも営業をさせていただいております」

「ーはーーか。」

「なんでしょうか?」

 

私は聴覚障害者です。

補聴器を使っておりますが、音がわかる程度で、言葉としては認識できません。

会話は、相手の口元を見て判断しております。

院長先生は、マスクを外してくださっていますが、読み取ることができません。

困った感じの院長先生に、申し訳なく思い、あてずっぽうで、伺ってみました。

 

「カタログですか?」

「ーー。」

「違うのですね。なんでしょう?」

 

なんだろう? 何か聞かれたけれど、一体なに?

私は、考えました。

あっ! もしかして!

 

「歯ですか?」

「そう。歯は、ーー、ーーですか?」

「歯は、その後、どうですか?」

 

笑顔の院長先生が、軽くうなずきました。

 

「おかげさまで、大丈夫です。ありがとうございます。」

 

私がやっと理解して、院長先生も嬉しそうですが、私もホッとして、笑顔になりました。

一つ問題が解決すると、気になるのが、診察室です。

 

「患者さんが、お待ちになっているのではありませんか?」

「ああ。」

「何か注文がございましたら、承ります。」

「いや、今日は・・・・・・。じゃあ、また。何かありましたら、来てください。」

「はい。ありがとうございました。」

 

診察室へ戻る院長先生をお見送りした私は、歯科医院から出ました。

 

診察室に患者さんがおられるのに、わざわざ受付へ来られるなんて、よっぽど私に会いたかったのね。

モテるのも、困るわー。

 

私は、家へ向かいながら、そう思いました。