はははのはのおはなし

私の歯を勝手に削ったのは、逮捕されて無罪になった歯科医ではありませんが、無罪になったニュース記事を引用したところ刑事告訴され、刑事さんから取り調べを受けました。その記事は地方法務局を通じて、1年以上前に見られないようにされておりますが、その歯科医は私に対して、非常に強い処罰意志と逮捕を望んでおられるとのことです。

勝手に歯を削られたのは、歯医者が嫌いだから。

髪を整えて、診察台の椅子に座って待っていると、院長先生が来られました。

 

「こんにちは。お久しぶりです。いつもお世話になっております。」

「こんにちは。」

 

院長先生は立ったまま、診察台の横に置いてあるカルテをご覧になられました。

私は、だぼっとした丈の長い、水色の診察衣を着ている先生を見ました。

 

見ないうちに年を取って、太ったみたい。

お腹が出て、中年太りだわ。

以前は、スマートだったのに。

頭は薄くないので、年齢を考えたら、まあまあかな。

奥さんも、妊娠したのかなと思うくらいお腹が出ているから、二人でおいしい物をたくさん食べているのでしょう。

奥さんは、私よりも年上だと思うので、妊娠ではないよね。

 

院長先生は50代、奥さまは先生よりは若いと思いますが、40代後半でしょう。

美人ではありませんが、愛嬌のあるかわいい感じです。

その奥さんが、小走りで来られました。

 

「虫歯ゼロです。」

奥さんは私に向かって、右手でOKサインをしてくれました。

 

「よかった。しみる感じが続いているのですが、虫歯ではないのですね。」

「どこですか?」

「この歯です。」

 

私が、左上の前歯を指差すと、院長先生は、その場でチラッとご覧になられました。

 

「噛み合わせが、悪いのでしょう。」

「噛み合わせが悪いのですか? 抜くのは嫌です!」

 

私は、院長先生から少しでも離れるように、背もたれに思い切り寄りかかりました。

以前、通った時に、この歯を抜くことを勧められたことを思い出したのです。

 

「抜きませんよ。診察を受けるのは7年ぶりですね。」

「そんなになりますか?」

「そこまでは来ていたのに。」

 

院長先生は、診察室のドアを指差しました。

私が待合室まで、来ていたことを言っているのだと思います。

 

「待合室までは、いつでも来られますが、診察室には入りたくありません。歯医者さんは、嫌いなのです。」

私が断言すると、院長先生と奥さんが困ったように、笑っておられました。