「レントゲンを撮りますので、こちらへお願いします。」
「はい。」
奥さんに導かれて、レントゲン室へ行きました。
レントゲン室は、診察室の中央にあります。
中へ入ると、椅子に座るように言われ、座って待ちました。
大き目の水色のベストを前から着せてくれ、機械を私の前に持って来て、高さを調整されました。
ベストを着た直後は、ずしっとした重さを感じましたが、座っているからか、重さはそれほど気になりません。
「メガネやヘアピンなど金属の物は、ここに置いてください」
「はい。補聴器もはずした方が、よいでしょうか?」
「んー。はずさなくても、大丈夫だと思います。」
「外します。」
「はい。」と、奥さまが笑いながら言いました。
念のため、補聴器も外しました。
私には、聴覚障害があります。
補聴器をしていても、音がわかる程度で、会話は相手の口元を見て判断します。
歯科では、みなさんマスクをしていますが、話をするときは、マスクをはずしてもらっています。
奥さまも、マスクをアゴにずらしてくださっております。
「ここにアゴを乗せて、ひたいをつけて、ここをくわえてください。」
「はい。」
アゴや額をつける部分には、紙がついていて、口でくわえる部分には透明なカバーがついています。
患者さんごとに、使い捨てなのだと思います。
「そのまま、動かないでくださいね」
「はい。」
奥さんは、小走りにレントゲン室から出られました。
あーあ。嫌だなぁ。
通い始めると、長いんだよねー。
1ケ月で終わるかなぁ?
仕事が忙しい時期に、通わなければならなくなったら、途中で終わらせてもらおう。
そんなことを思いながら待っていると、レントゲン室のドアが開きました。
「終わりました。楽にしてください。」
「はい。」
私が機械から離れると、奥さんは機械を移動させて、私からベストを外しました。
「お席でお待ちください。」
「はい。ありがとうございます。」
私は、メガネをかけ、補聴器をして、ヘアピンを持ったまま、レントゲン室を出ました。