誰もいない待合室の壁側の椅子に座って、私は周りを見渡しました。
受付カウンターや診察室のドア、本棚、ゴミ箱にも木が使われています。
ポスターや歯ブラシがなければ、医院というよりは部屋のようです。
青い布製の一人用椅子を並べて、ソファーのようにしてあります。
受付前に背中合わせにして6脚、壁側に5脚あり、背もたれが低いので、部屋の中を見渡すことができます。
私は、呼ばれることを考えて、診察室に近い椅子に座りました。
診察室側の壁には、木製のからくり時計がかかっています。
それは、正時メロディとともに、人形が動き出します。
小人を思わせる小さな人形は、とてもかわいいです。
正時に居合わせると、ちょっと嬉しかったりします。
あーあ。診察を受けることに、なっちゃった。
しばらく来ていないし、年に1度は診てもらった方がよいのはわかっていたけれども、歯医者は苦手だから、なるべく来たくない。
これも営業のためだから、仕方がないよね。
きっと詰め物、全部取り替えだね。
1ケ月は、通わないとならなくなってしまった。
今は忙しくないから、いいかな。
そんなことを考えながら、診察室のドアを見ていました。