はははのはのおはなし

私の歯を勝手に削ったのは、逮捕されて無罪になった歯科医ではありませんが、無罪になったニュース記事を引用したところ刑事告訴され、刑事さんから取り調べを受けました。その記事は地方法務局を通じて、1年以上前に見られないようにされておりますが、その歯科医は私に対して、非常に強い処罰意志と逮捕を望んでおられるとのことです。

勝手に歯を削られたのは、マウスピース作ることになったから。

「マウスピースを作成しては、いかがでしょうか?」

「マウスピースですか?」

「寝るときにして、歯ぎしりから歯を守るとよいと思います。無意識に噛みしめていますから、歯がしみるようになったのでしょう。」

 

院長先生から、そう言われて、私は意外に感じました。

私は、子どものころから歯ぎしりで、注意をされたことが一度もありません。

奥さんがパタパタと、その場を離れたと思っていたら、すぐに戻って来られました。

 

「マウスピースは、柔らかいのと、硬いのがあります。硬いのは安いですが、柔らかいのは、少し高いです。」

 

院長先生は、U字型の白い板みたいなのを私に渡してくださいました。

それは硬くて、薄いプラスチックの板みたいで、上の歯と下の歯の噛み合わせ部分に挟んで装着するように思えました。

余計に噛んでしまいそうでしたし、ずれて飲み込んでしまわないのかと不安に感じました。

 

「硬いですね」

「こちらは、柔らかいですよ」

 

院長先生に、マウスピースをお返しすると、違うのを渡されました。

透明で柔らかく、シリコン製のようでした。

歯の形になっていて、上の歯に被せて使うようです。

これならば、ずれてしまうことはなく、歯にも安心に思えました。

 

「柔らかいですね。よさそうですが、こちらの方が高いのですよね?」

「マウスピースも、医療保険の対象になります。」

 

「6千円になります。」

院長先生と話をしていると、ニコニコ顔した奥さんが、覗き込むようにして、声をかけてきました。

 

「私は重度障害者なので、医療費は初診料のみなのです。」

 

奥さんが、カルテの表紙をじっくりと見てから言いました。

 

「無料です。」

「よかった。わーい。」

 

私は両手を上げて、大げさに喜んでみました。

院長先生と奥さんは、とても嬉しそうでした。